夜中に何度もトイレに行く夜間頻尿
夜間頻尿とは、「夜寝ている間に一回以上トイレに行くこと」と定義されています。高齢者に多く見られる代表的な症状で、年を取るとともに起きやすくなります。定義では「一回以上」とされていますが、二回以上トイレに行くような状態ですと、治療の対象になります。
夜間のトイレは転倒や不眠のリスクが上昇するので、心当たりのある方は治療をお勧めします。
夜間頻尿の原因は?
多尿・夜間多尿
1日の尿量が40ml/kg(例:50kgの方だと2000ml)以上の場合、「多尿」と診断します。また、夜間尿量が一日の尿量の33%以上(若年成人では20%以上)だと「夜間多尿」と診断されます。
多尿の原因は、水分の過剰摂取や尿量が増加する薬剤、アルコール・カフェインの過剰摂取、糖尿病などがあります。
膀胱畜尿障害
膀胱畜尿障害とは、膀胱に尿がためることができない状態を言います。主な原因は過活動膀胱、間質性膀胱炎、前立腺肥大症などの疾患によるもので、昼間にも頻尿になる傾向が見られます。
睡眠障害
加齢により眠りが浅くなる傾向があるため、目が覚めてトイレに行くことが多くみられます。
また、夜間頻尿が原因で不眠症に陥る場合も少なくはありません。睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害で発症する場合もあります。
夜間頻尿を改善することで、一緒に睡眠障害も改善される場合もあります。
夜間頻尿の治療
薬物治療と生活習慣の改善を行います。夜間頻尿には生活習慣病や睡眠障害などの疾患・症状や、老化など、様々な原因によって発症する傾向が強いです。そのため、原因を明確にしてから治療を行うことが重要です。
まずは日頃の生活習慣を改善しましょう
水分補給の改善と運動を行います。特に夜のカフェイン・アルコールの摂取は控え、水の飲みすぎにも気を付けてください。また、夕方から夜にかけて散歩など軽い運動をする習慣をつけることも大事です。運動をすることで、体内の余計な水分が汗として放出されるようになります。
薬物治療~漢方薬の処方も~
利尿薬や抗利尿ホルモン、睡眠薬(睡眠障害を併発している場合)抗コリン薬(過活動膀胱の場合)などを処方します。薬剤には副作用が発生することもあるため、副作用が現れましたら医師へご相談ください。
夜間尿量や回数に応じて、患者様に合った漢方薬を選択することで、一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療が行うことが可能です。
また、当院では不眠症の治療にも対応しております。夜間頻尿と不眠症は密接な関係があるので、どちらかの症状が改善されることで、不眠症と夜間頻尿の両方が改善されることもあります。
不眠症でお悩みの方もお気軽にご相談ください。
夜間頻尿Q&A
日本人(成人)の一日当たりの尿量・排尿回数はどれくらいですか?
尿量は水分摂取量によって異なりますが、だいたい1300ml~1600mlで、排尿回数は8回未満です。
水を飲むと血液がサラサラになると聞きました。これは本当のことでしょうか?
確かに、水分不足は脳梗塞や動脈硬化のリスクが高まる要素の一つだとは言われています。しかし、『日本老年医学会雑誌 2005』によりますと、「水分をこまめに摂ること」と「脳梗塞・動脈硬化の予防」には、直接的な証拠はないと報告されています。
こまめな水分補給は熱中症対策としては有効ですが、頻尿になるほどに飲み過ぎないよう、ほどほどに摂取しましょう。
夜にのどが渇いた時、水を飲んでも大乗ですか?
のどの渇きは身体が水分を欲しているサインなので、極力のどが渇く前に水分補給をしましょう。夜に水を飲むときは、口に含む程度で済ませ、カフェイン・アルコールを含む飲料は避けてください。
トイレで目が覚めた後、なかなか眠れません。部屋の電気をつけてからトイレに行っているのですが、そうするとまぶしくて目が覚めてしまいます。どうすればいいでしょうか?
部屋の電気をつけてしまうと交感神経が働いてしまうので、寝つきが悪くなります。コードレスでトイレまで持ち運びができるライトやフットライトを使って、トイレへ行くことをお勧めします。
どうして高齢者になると夜間頻尿になりやすくなるのですか?
加齢によって以下の変化が身体に起きてしまうので、夜間頻尿が起きやすくなります。
- 膀胱が小さくなる
- 睡眠の質が低下する
- 睡眠時の尿量を調節する抗利尿ホルモンの分泌量が減少する
夜間頻尿があっても睡眠に支障をきたしていない場合でも、治療する必要はありますか?
日常生活に支障をきたしていないのであれば、治療を行う必要はありません。しかし、夜間頻尿には高血圧や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が原因の可能性もあります。他の疾患の初期症状として現れていることも踏まえ、医師へ相談することをお勧めします。
夜間頻尿の原因となる疾患には、どのようなものがありますか?
原因となる疾患ですが、糖尿病や心不全、脳血管障害、高血圧、腎泌尿器疾患などがあります。
また、疾患ではないですが、肥満も原因の一つとして挙げられます。